暑かった…京都
Maxが同窓会で京都に行くという。ついでに、天候次第だが、中山道の最後の行程「石山から京都」を歩いてくるかという。
すごろくで言えば「上がり」である。それでは三條大橋で盛大なる拍手で迎えねば…ということになり同行することになった。
同窓会のMaxとは、京都駅でバイバイして、鞍馬へ向かう。20分強で出町柳へ。其処では叡電鞍馬線が待っていてくれるという運のよさ。叡電には、普通の車両のほかに「きらら」という展望車両付きと、車両が四季の自然に塗り分けられている「こもれび」というなんとも賑やかなペイント車両がある。その「こもれび」に乗れた。
サッカーの試合があるらしく中学生が大勢乗っていた。叡電は、進行方向前の車両の二つの扉しか開かない。少年の一人が降りるとき言った。「なにぃ これ。まるでバスじゃん!!」そうなのだ。乗降口に、バスについている「カード読み取り機」がついているのだ。
バスじゃん電車は、木立すれすれに走る。むせ返るような緑の中を走る。鞍馬まで27分。僅かな時間で緑深い山の中である。
駅には天狗の面が飾られてあった。まずは腹ごしらえということになる。寺とは反対のほうになる坂道の途中の店に入る。料理旅館が昼だけ懐石弁当を出しているのだ。懐石風…あくまで風…ではあるがなんと鱧まで付いていた。これはとても美味しかった。おなかも一杯になった勢いで、「ケーブルやめて歩こう」ということになってしまった。
かの「火祭り」で有名な由岐神社は、
重文の山門が修理中。ブルーのシートに覆われていて見ることかなわず残念至極。「何のために急な坂を登ったのぅ」と思わずぼやいてしまった。そのくらいここまでの坂は急なのだ。
一息入れて、歩き始める。途中貞明皇后のお休みどころなんて言うのがあったりして、九十九折の坂を登ること30分。
着いた鞍馬寺は、
明日行われる「竹伐り神事」の準備がなされていた。なんでもはるか昔、この辺りは大蛇が大暴れしていたそうな。それを退治したときに、大蛇が「見逃してくれたら今後鞍馬に水が絶えることのないようにする」と約束したそうな。それ以来鞍馬一帯は水が絶えることなく又水の被害もなかったそうな。その故事に倣って、大きな竹を大蛇に見立て、僧兵が2組に分かれて竹を2つに切る速さを競うという神事が行われるというのだ。「何のことない、お寺の運動会か」と罰当たり娘は言う。境内は沢山の竹とロープが張られ、翔雲台あたりも注連縄ぎりぎりまでベンチなどが寄せられていた。
明日はかなりの人出になることと思われる。寺の人も「すごいでしょうなぁ。見当もつきません」とのこと。以前訪れた時はかなり賑わっていてちょっとがっかりしたのだが、今日は、はるか昔に思いを馳せる静けさの中にある鞍馬でよかった。
時間もあったので、貴船によることにする。名物「床」が始まっているので混んでいるだろう事は覚悟していた。が、その賑わいはものすごいものであった。貴船口駅は料理屋の迎えの車が数珠繋ぎで、路線バスは時間どうりにはこられない。川沿いは、ずーっとおくまで「床」「床」「床」。貴船川のせせらぎは聞こえるが、歩く者はただずーっと張られた「床」の葦簾を眺めていくことになる。まぁこの時期は仕様がない、京の奥座敷の夏の風情を…と思うしかない。
貴船神社はご存知「水神様」のトップである。ここには水占いなるものがある。おみくじ、といっても12X17の大きな紙である。それを「水占斉庭」というところに浮かべるのだ。文字が浮き出てくる仕組みである。そばには「御神水」がでている。Maxのお土産にと、持っていたペットボトルにいただいた。以前来たときは森閑としていて、まさしく神のいる場処の思いを強くしたのだが、訪れる時期によってこうも違う顔を見せるものかと驚くばかりである。貴船からは市内に帰る最後のバスに乗ることが出来た。北大路まで私たちのみというタクシーのようなバスであった。ホテルまで1時間弱で帰ってこられたのはうれしい。
ホテルのクーラーの音がやけに大きい。ぶっ壊れているのではないかと思うほどうるさい。止めると今度は暑い。寝たのかどうかはっきりしないでいるうちに夜が明けた。薄暗い中でMaxがごそごそやっている。台風が来ているから午後から雨になるという。「降られないうちに歩いてくる」と朝早く出かけた。娘は京都のいわゆる「修学旅行で行く名所旧跡」というところに行っていないという。だから今日は「絶対二条城!」という。そういわれれば…ならば今日は修学旅行コースで行こうという事になった。
まずは西陣へ。京都の産業西陣織の全てが見られるという西陣織会館へ。地下鉄「今出川」から歩く。今日は朝からやけに暑い。10分ほどが長く感じられる。早くも観光バスが着いている。何のことはない、土産物屋なのであった。西陣織のことは確かに説明されてはいた。機織の実演?もある。しかーし、その実体は土産物屋であるのだ。着物ショウというのが売りであるらしい。
可愛いモデルが舞台を歩く。オネーチャン好きの方は一度どうぞ。ただし、西陣織の着物を着ているぞー!!
今出川の駅からずーっと「晴明神社」という案内板がたっていた。陰陽師という映画がヒットして以来ここはかなりの人が来るようになったと聞く。以前は訪れる人もさほど無く静かな小さな神社であった。どんなに変わったのかと「ミーハーOkan」の血が騒ぐ!!ということで寄った。神社はちょっと大きくなっていた。そして何より驚いたのは、周りに「陰陽師グッズ屋」さんができていたことだ。私たちがいる間にも、次から次と人が来る。修学旅行生たちは、この暑さの中、男の子達は「新撰組」の扮装、女の子達は平安女性に扮装をしている。市内にも「時代衣装」を時間貸しする所があるらしい。彼らは、安倍晴明には興味が無い、ぶら下げられているおびただしいスター達の絵馬が興味の対象である。
「晴明井戸」というのがある。この水には、諸病平癒の信仰が厚く、流水口が今年の恵方を向いているという。千利休の終焉の地であり、最後に自服したお茶もこの水で点てたといわれている。が、これも、なにやら新しげである。映画、TVなどで取り上げられて、静かなところが、どんどん豊かになり、猥雑になっていくのを見るのはちょっと寂しい気がするなぁ、なんてことを思ってしまった。.
さて、お待ちかねの二条城へ。なんと我等二人、一条から歩いてしまったのだ。かんかんでりの堀川通りをである。途中、Okanは音を上げて「バスに乗ろう」と言ったのだが、元気印は「もうすぐ!」という。ようよう二条城に着いて彼女曰く「私も年だねぇ。前はこのくらい平気だったけどちょっと疲れたわ。」暑さとの戦いのような見学と相成った。
ヘロヘロのOkanは、唯一クーラーの効いているお休み処から動けない。いや、動きたくない。「今、山科だから三条は3時ごろかなぁ」とMaxから連絡が入る。ではでは、次なる行程へ。
東西線で「東山」まで。そう、平安神宮へ行くのである。修学旅行なら一度は行くところである。運よくザーッと通り雨。雨がこんなにうれしかったことは無い。ともかく朱塗りの神殿を見て、「もぅ、歩くのはいや!」ということでタクシーで三条へ。
あまりの暑さにたまりかねて、Maxの歩いてくる通りが見える喫茶店で一休み。
賛否両論いろいろあるが、携帯電話は、こういうときは本当に便利だ。特にMaxのようなウロウロ派との待ち合わせにはありがたくて伏し拝みたくなるってものだ。「どこだぁ」と電話片手にきょろきょろしているおじさんを見つけるのは簡単である。ちょっと早く着いたので、川に下りて汗のTシャツを洗濯したそうで、さっぱりと着替えていた。
三條大橋の真ん中で記念撮影。これで中山道すごろくは「上がり」。
可愛い(?)娘の祝福にほほが緩む。疲れも吹っ飛ぶ。
まずは一区切り。おめでとう…オメデトウ…
新幹線で50分、「私の半年は50分か」とMaxがつぶやく。時の流れと、交通などの発達ははすさまじい。現代人はスピードが命。みんな急いでいるのかもしれない。なにに?
だから、
のんびりとはるか昔を偲びながら、かつて生きた、歩いた人々の跡を巡る旅が心を休ませてくれるのかもしれない。
フェーン現象とやらで、京都は、とにかく暑かった。
名古屋駅に着いて「名古屋が涼しい」なんて感じたのは初めてである。余談だが、Okanは、この後3日ばかり寝込んでしまった。そして、つくずく「歳だなぁ」と感じて、今、少々落ち込んでいる。もっとも、そのくらいの方がいい…と言う声、無きにしも非ず…!?
2004年6月