花菖蒲が咲く季節になった。
江戸時代から続く堀切菖蒲園と江戸川沿いにある小岩菖蒲園を訪れた。
◎ 堀切菖蒲園
平成二十六年(2014)六月十三日、
葛飾区にある花菖蒲で有名な堀切菖蒲園へ行くため、
京成本線堀切菖蒲園前駅で降りた。
駅から南西に五百メートル程歩くと綾瀬川沿いに菖蒲園があった。
約十分程の距離である。
堀切菖蒲園は明治時代に開園した堀切園の跡である。
菖蒲園の起源については、
「 室町時代、堀切村の地頭が家臣の宮田将監に命じて、
福島県郡山の安積沼より取り寄せて栽培させたという説と、
江戸時代文化年間(1804〜1817)に、百姓の小高伊左衛門が各地の花を集めて、
庭で繁殖させたのが始まりという説とがある。
堀切で最初の花菖蒲園は、江戸末期に開園した小高園だが、
明治になると武蔵園、吉野園、堀切園、観花園などの菖蒲園が登場する。 」
庭内に入ると、色々な種類の花菖蒲が咲いている。
花菖蒲は石灯籠とも相性がよい。
渡辺千秋の歌碑があった。
「 ほりき里能さとのあやめは老まつに ちよをちきれてさ支さかゆら舞 」
説明板
「 渡辺千秋は江戸末期の高島藩の藩士の末裔で、
内務官僚、貴族院議員になった人物で、歌人としても有名だったようである。
この歌碑は、明治三十五年(1702)に、武蔵園に建立されたが、同園が閉鎖になり、
その後、幾多の変遷をえて、当園にある。 」
菖蒲園は江戸百景に取り上げられ、 鈴木春信や安藤広重などの有名な浮世絵にも描かれた。
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堀切菖蒲園には、江戸系花菖蒲があることで有名であるとあるが、
小生にはどれも同じに見えてしまう。
「 天日に 菖蒲の花の 白まぶし 自得 」 という句碑があった。
説明板に、 「 句碑は、高浜虚子に師事した、松野貞安 (自得) の句で、
ホトトギスの投句されたもの。 」 とあった。
菖蒲園を後にして昔からと思える狭い道をいくと、
道の両側に色々な紫陽花が植えられていた。
ガクアジサイと思える木の葉の緑と、花(ガク)の形の取り合わせが美しかった。
しばらく行くと、「魚道橋(うおみちはし)」 の石の道標が建っていた。
その近くに、七つの石像が建っていたので、近づくと「菖蒲七福神」とあり、
石碑がある。
石碑の全文
「 天祖神社は大正十二年に地元の氏神として鎮座したもので、
七福神は平成六年の建立された。
ここは駅前にある天祖神社の末社である。
駅前にある天祖神社は旧堀切村の鎮守で、
永禄三年(1560に勧請されたといわれる古い神社である。
「葛西志」 の 堀切村 の条に 「 神明社 除地303坪、村の西北により有。
永禄3年(1560)の勧請にして、極楽寺持なり。 」
とあり、江戸時代までは極楽寺もある神仏混淆だったようである。
堀切の地名は、古くは 応永五年(1398) の 「葛西御厨注文」 に
「 堀切 14町1段半 」 と記載されていて、
鎌倉時代中期以降、伊勢皇大神宮の神領地だった関係から、
この社も奉祀されたものと推定される。 」
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◎ 小岩菖蒲園
この後、江戸川区にある小岩菖蒲園に向う。
京成本線江戸川駅で下車し、 東に江戸川の河川敷に向うと小岩菖蒲園が突然現れた。
「 小岩菖蒲園は、殺風景な河川敷を花のある憩いの場にしようと、
地元の老人からハナショウブが寄贈されたことが始まりで、
歴史的には新しいようである。 現在、ボランテイア団体が運営管理している。
江戸川河川敷に広がる菖蒲園の面積約五千平方メートルに、
江戸系を中心に外国系を含めて百種類五万本の花菖蒲が植えられている。 」
近くに京成電車の鉄橋、その先には総武線の鉄橋があり、
花菖蒲は京成電車の車窓からも眺められると思った。
園内を歩きまわり、梅雨の晴れ間に華やかに彩る花菖蒲を堪能できた。
「ムジナモ発見の地」 という石碑を見付けた。
説明板
「 ムジナモは水中にただようモウセンゴケ科の食虫植物で、
大正十年にムジナモ生育地として国の天然記念物に指定されたが、
数度の洪水で流失して、大正十五年に国の指定を解除された。 」
河川敷を歩き、京成電車の鉄橋の下をくぐると、 「小岩市川の渡し跡、小岩市川関所跡」 の説明板が建っている。
説明板「小岩市川の渡し跡、小岩市川関所跡」
「 江戸幕府は江戸を守るため、江戸川に橋を架けなかった。
両国から堅川の北岸を東にすすみ、逆川の渡しで、中川(旧中川)を渡り、
小岩で現在の江戸川を渡って、房総に向う道を 「元佐倉道」 といったが、
明治八年(1875) に千葉街道に改称された。
小岩市川の渡しの小岩側に小岩市川番所が設けられて、
常時四人の番士が務めていたが、明治二年に関所は廃止された。 」
説明板の南方に国道14号が通っていて、
橋を渡って市川、千葉へと車が走っていった。
そうした殺伐した風景と違い、
小岩菖蒲園は明るく華やかな桃源郷を造っていた。
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