『 松本市横田に「新浅間温泉」と看板を掲げる“温泉街”がある。 実は源泉の温度が下がり、十年前の簡易検査で温泉法で定めた「温泉」の基準を満たさないと判定され、各旅館は温泉利用の許可申請を取り消していた。 「看板は不当表示」とも指摘され、今年三月、今度は詳しく検査した結果、成分が基準を満たし、やっぱり「温泉」であることが分かった。 現在残っている四軒の旅館は「これで大手を振って温泉を名乗れる」と、近く、再び保健所に温泉利用の許可申請をし、「横田温泉」と名称を変えて再出発する。 』
というのが、記事の骨子である。
新浅間温泉は、歴史のある浅間温泉とは別個のものである。
昭和34年に温泉を掘り当ててできた温泉であるから、最近の温泉に比べれば古いが、それだけ掘った深さが浅かったのであろう。
掘られた当時から温泉法の温度基準でかろうじて合格になる26度しかなかった。
その後の94年の検査で、22.6度しかないことが判明したが、経費の問題から、温泉のもう一つの要件である「成分」の詳しい検査や温度を上げるための掘削はせず、旅館は温泉利用の許可申請を取り下げた。
ところが、その後も温泉街入口の”新浅間温泉”という看板は撤去せず、源泉の水を沸かして温泉として提供してきたのである。
入浴客は温泉と信じてきたのであるが、入ったお湯は温泉法で認められた温泉ではなかったのである。
こういうことを可能にしたのは、現行の温泉法には”温泉”を表示することについて規定や罰則がないからである。
温泉が商品だとすれば『不当表示法』で摘発できる(?)のかも知れないが、やはり温泉法の不備といわざるを得ない。
一刻も早い”温泉表示法”の立法が望まれる。
この温泉の場合、温泉成分を検査した結果、温泉法をクリアしたということは騙されていたお客にとって唯一の救いであろう。
( 2004年 6月23日 )